2.各試験の特色

「1.弁理士試験の概要」で説明したとおり、弁理士試験は異なる3つの形式の試験から成っています。各試験の特色は以下の通りです。

(1)短答試験

短答試験は、一言で言うなら「一番大変な試験」です。

試験で出題される法律は、特許法をはじめとする7法域に渡り、幅広い知識の習得が求められます。また、それぞれ5つの枝を有する60問の問題を3時間半で解答しなければなりません。単純に計算すると、60問×5枝=300枝の選択肢に目を通し正しい枝を選択する必要があります。

「1.弁理士試験の概要」で説明したとおり、短答試験の時間は3時間半です。マークミス等がないか等見直しの時間を30分確保するとなると、問題を解くために使える時間は実質3時間程度です。

ということは、3時間という限られた時間に300枝という膨大な数の選択肢に目を通さなければならないことになります。単純に計算すると、1枝あたりに費やせる時間は約36秒です。36秒という非常に短い時間で、各枝の正誤を見極め回答しなければなりません。

幅広い知識が求められ、且つ瞬発力が求められるという意味では、短答試験が「一番大変な試験」であるといえると思います。

(2)論文試験

論文試験は、一言で言うなら「一番難しい試験」です。

試験で出題される法律は、特許・実用新案法、意匠法及び商標法の4法域と、短答試験と比較すれば狭い範囲です。

しかしながら、出題された問題から論点を読み取り、それを論文形式で解答しなければなりません。当然、その文章は、「読み手」である試験官に通じるものでなければいけません。

また、論文試験で出題される「論点」は、短答試験の問題と比較すると難しい論点が出題されます。時には、法律に記載が無く判例でも決着がついていない、学説のみで語られているような難しい論点が出題される場合もあります。論文試験を受けるに当たっては、短答試験で求められる知識よりもより深い知識が求められます。

限られた時間の中で、問題文を読み、論点を把握し、それを答案用紙の上で表現する。論文試験が「一番難しい」試験であるといってもよいと思います。

(3)口述試験

口述試験は、一言で言うなら「一番嫌な試験」です。

「1.弁理士試験の概要」で説明したとおり、口述試験は面接形式の試験です。口述試験の試験官は、ベテランの弁理士の先生が担当されることがほとんどです。

自分よりも遙かに法律知識を有する試験官の先生を目の前にして、受験生が口頭で法律に関する問題に解答するのですから、そのプレッシャーたるや並大抵のものではありません。私も、弁理士試験に合格したのは8年前とずいぶん昔の話となり、試験の詳細は記憶からなくなりつつありますが、口述試験を受けたときに感じたプレッシャーは未だに生々しく記憶しています。

普段ならすらすらと口から出てくるはずの知識が、プレッシャーのせいで全く出てこないなんてことはざらにあります。

間違いなく、弁理士試験で「一番嫌な試験」は、口述試験で決まりです。