9.基本書紹介

弁理士試験の勉強においては、上記の通り条文と青本が一番重要です。

しかしながら、条文や青本はあくまでも「基本」です。基本的な事項のみで突破できるほど、弁理士試験は甘くありません。条文や青本の知識を基礎として、より深く法律の内容を知ることが重要であることは間違いがありません。

より深い知識の習得を目指す方のために、以下のような本をご紹介いたします。お勧め度は私の目安で、★の数が多いほどお勧め度が高くなります。

1.特許・実用新案法編

(1)標準特許法 有斐閣 高林龍著 (お勧め度★★★★★)

特許法の内容、判例、論点等が、約300ページというコンパクトなサイズにまとめられています。この本を一通り読むことで、特許制度の概要や、重要な判例及び論点を概観することができます。

 

(2)特許法 有斐閣 茶園成樹著 (お勧め度★★★★★)

本の性質としては、(1)標準特許法と同じです。著者の茶園先生は、過去に弁理士試験の試験委員をされていたこともあり、弁理士試験の受験生を意識して書かれている部分があると思います。この本か、(1)の標準特許法のどちらかを読むことをお勧めします。

 

(3)特許法 弘文堂 中山信弘著 (お勧め度★★★★)

以前は吉藤先生の「特許法概説」が基本書と言われていましたが、当該書籍が入手困難となっている今、基本書としてあげることができるのがこの中山先生の特許法になります。特許法の論点を詳しく解説しており、(1)や(2)に記載されている論点について、さらに詳しく知りたいときに最適な本です。ただし、かなり専門性の高い書籍であり、読みこなすには一定以上の法律知識を必要とします。青本や(1)又は(2)の本を読んで、さらに詳しい知識を習得したい人向けの本です。

 

(4)知的財産権訴訟要論 発明推進協会 竹田稔著 (お勧め度★★★)

特許だけで無く、意匠、商標の侵害訴訟の判例や、侵害訴訟において問題となる論点を詳しく知りたいときに最適な本です。ただし、(3)の本と同じくかなり専門性の高い書籍であり、ページ数も800ページにわたる大著です。読みこなすには、一定以上の法律知識と時間を要する本ですので、青本や(1)又は(2)の本を読んでさらに詳しい知識を習得したい人か、侵害訴訟の論点について辞書的に使用したい人にお勧めします。

 

2.意匠法編

(1)意匠審査基準 (お勧め度★★★★★)

一般的に販売されている書籍では無く、特許庁のHPで入手可能です。短答、論文、口述の各試験でも、審査基準の記載が出題されることが多々あるため、必須の書籍です。

http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/isyou-shinsa_kijun.htm

 

(2)意匠法 有斐閣 茶園成樹著 (お勧め度★★★★★)

以前は、意匠法の基本書と言えば高田先生の「意匠法」、斉藤先生の「意匠法概説」がよくあげられていましたが、これらの書籍は専門家を対象として書かれた書籍であり、また入手が非常に困難でした。私が受験生の時には、意匠法及び商標法の受験生向け基本書が存在しないことが悩みの種でした。そういった意味では、茶園先生の書かれたこの本はまさに受験生向けの意匠法の基本書として一番おすすめできる本です。というよりも私が受験生時代にほしかったと思える本です。意匠法の内容、判例及び論点を網羅した上で、約300ページという非常にコンパクトにまとめられたこの本は、意匠法を勉強する弁理士受験生のバイブルになり得る本であると思います。

 

3.商標法編

(1)商標審査基準 (お勧め度★★★★★)

意匠審査基準と同じく、商標の審査基準もその内容が弁理士試験で問われることがよくあります。受験生にとっては必須です。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/syouhyou_kijun.htm

 

(3)商標法 有斐閣 茶園成樹著 (お勧め度★★★★★)

いい加減回し者呼ばわりされそうで怖いのですが、商標法についても茶園先生の本がお勧めです。かつて基本書と言えば網野先生の「商標」(いわゆる「網野商標」)が真っ先にあげられていましたが、2002年に出版された第6版で改訂が止まっており、入手も困難です。また、「網野商標」は、専門家を対象とした書籍であり、弁理士試験の受験生には若干重たい内容です。茶園先生の本は、全般的にコンパクトにまとめられており、弁理士受験生向けの本といえるでしょう。お勧めです。

 

(4)商標審査基準の解説 発明推進協会 工藤莞司著 (お勧め度★★★★)

商標法の審査基準を逐条的に解説した本です。豊富な具体例が掲載されており、条文や審査基準だけでは把握しにくい商標審査の実態を理解するためにうってつけの書籍です。全部を読まずに辞書的に使っても良いでしょう。

 

4.不正競争防止法編

(1)逐条解説不正競争防止法 有斐閣 経済産業省知的財産政策室編 (お勧め度★★★★)

青本の不正競争防止法版です。法律の内容、立法趣旨だけで無く、判例の解説も含まれています。少なくとも短答試験レベルの知識は、この本が一冊あれば十分です。

 

5.著作権法編

(1)著作権法入門 有斐閣 島並良、上野達弘、横山久芳共著 (お勧め度★★★★)

著作権法はとにかくわかりにくい法律で、体系立てて勉強することが困難な法律です。私も受験生時代に非常に苦労しました。この本は、3人の先生の共著で、著作権法の内容、論点等をコンパクトにまとめた非常にわかりやすい本です。短答試験はもちろんのこと、選択科目で著作権法を選択される受験生にもお勧めできる本です。

 

6.条約編

(1)荒木先生の「図解」シリーズ 発明推進協会 荒木好文著 (お勧め度★★★★★)

条約を勉強する際に一番おすすめしたい本が、荒木先生の「図解」シリーズです。図面を多用してコンパクトにまとめられており、条約の知識を短答試験合格レベルまであげるのにうってつけの書籍です。

 

(2)パリ条約講話 発明推進協会 後藤晴男著 (お勧め度★★★)

パリ条約を学ぶ際の基本書としてあげられるのがこの「パリ条約講話」です。パリ条約の内容はもちろんのこと、国際消尽等の論点についても詳しく書いてあり非常に参考になる本です。ただ、1000ページにもわたる大著であり、全てを通読するにはちょっと時間がかかります。私は受験生時代に読みましたが、受験対策で使用するときは辞書的に使う方が良いと思います。